この記事の結論

この記事で分かること

  • 親の介護に資格は必要ありません。最初にやるべきは地域包括支援センターへの相談と、要介護認定の申請です。
  • それでも学ぶ価値があるのは3つ。①自分の腰を守る介助技術②認知症への理解③介護保険の仕組み。この3つは介助の負担を確実に下げます。
  • 資格を取るより先に、使える制度を知ってください。介護休業は対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割して取得できます。
  • 「自分で全部やろう」としないでください。介護離職に至る前に、サービスで代替できる部分を切り分けることが最も重要です。
  • 将来的に介護の仕事に就く可能性があるなら、介護職員初任者研修が最も汎用性があります。家族介護にも仕事にも使えます。

「親の介護が始まりそう。資格を取ったほうがいい?」
「何から手をつければいいのか分からない」
「仕事と両立できるだろうか」

先にはっきりお伝えします。親の介護をするのに、資格は必要ありません。

そして資格を取ることより先にやるべきことがあります。お住まいの地域包括支援センターへの相談と、要介護認定の申請です。ここを飛ばして知識を集めても、使えるサービスにつながりません。

そのうえで、学ぶ価値があるものは確かにあります。①自分の腰を守る介助技術②認知症への理解③介護保険の仕組み——この3つです。この記事では、その順番で整理します。

この記事で参照した公開情報(2026年8月26日確認)
・育児・介護休業法:介護休業は対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割取得可能介護休暇は年5日(対象家族2人以上は年10日)
・地域包括支援センター:市区町村が設置。高齢者とその家族の相談を無料で受け付け
・要介護認定:市区町村への申請、認定調査と主治医意見書に基づく審査

制度の要件・手続きは改正や自治体の運用により異なることがあります。実際の利用にあたっては、お住まいの市区町村、地域包括支援センター、勤務先の就業規則をご確認ください。

結論|資格より先にやることが3つあります

順番やることなぜ最初か
1地域包括支援センターに相談する無料。使えるサービスと手続きを一括で教えてもらえます
2要介護認定を申請する結果が出るまで期間がかかります。早いほど選択肢が増えます
3勤務先の介護休業・介護休暇の制度を確認する仕事を辞める前に、使える制度を把握する
4必要であれば知識を学ぶ介助技術・認知症・制度の3つ

「まず勉強しなければ」と考える方が多いのですが、順番が逆です。相談と申請を先に進めながら、必要な知識を後から補うほうが、負担が軽くなります。

最初の相談先|地域包括支援センターです

項目内容
設置市区町村が設置しています
費用相談は無料です
相談できること要介護認定の申請、使えるサービス、ケアマネジャーの紹介、権利擁護など
どこが担当か親御さんがお住まいの地域を担当するセンターです(市区町村の窓口・ホームページで確認できます)
まだ介護が始まっていない段階でも相談できます。早いほど選択肢が多くなります

電話でこう伝えれば足ります。
◯◯に住む親のことで相談したいのですが。最近、生活に不安が出てきていて、何から始めればよいか分かりません
整理してから相談する必要はありません。整理を手伝ってもらう場所です。

資格より先に、使える制度を知ってください

仕事と介護を両立するための制度

制度内容
介護休業対象家族1人につき通算93日まで。3回を上限に分割して取得できます
介護休暇年5日まで(対象家族が2人以上の場合は年10日)
所定外労働の制限残業を免除してもらえる制度
時間外労働の制限時間外労働に上限を設ける制度
短時間勤務等の措置勤務時間の短縮など

育児・介護休業法に基づく制度です。要件・手続き・給付金の取扱いは、勤務先の就業規則および各窓口でご確認ください。

介護休業は「介護をするため」だけの制度ではありません

93日を使って自分が介護し続けるのではなく、その間に「サービスを組み立てる」ために使うのが本来の趣旨です。

要介護認定の申請、ケアマネジャーとの打ち合わせ、施設の見学、住環境の整備——これらを進めて、仕事に戻れる体制を作るための期間と考えてください。

介護離職は慎重に|先に切り分けてください

やること内容
①介護保険サービスで代替できる部分を洗い出す訪問介護、デイサービス、ショートステイなど
②勤務先の制度を確認する介護休業・介護休暇・時短・所定外労働の制限
③家族・親族で分担できる部分を決める1人で抱えないことが最も重要です
④それでも足りない部分を自分が担う

離職すると収入が途絶えるうえ、介護が終わったあとの再就職で年齢が壁になることがあります。そして介護期間は、始まる時点では見通せません。

「自分がやらなければ」と感じるのは自然なことですが、まずサービスで代替できる部分を切り分けてください。この切り分けは、地域包括支援センターやケアマネジャーが一緒に考えてくれます。

それでも学ぶ価値がある3つのこと

1|ボディメカニクス|自分の腰を守る介助技術です

家族介護で最も多い体の不調が腰痛です。力任せに持ち上げる介助を続けると、支える側が先に壊れます。

ボディメカニクスは、体の仕組みを使って、少ない力で介助する技術です。重心を近づける、てこの原理を使う、大きな筋群を使う——原則を知るだけで負担が変わります。

2|認知症の理解|対応が変わります

同じ質問を何度も繰り返される、物がなくなったと言われる、夕方になると落ち着かなくなる——これらには理由があります。

「なぜその行動が起きるのか」を知っているかどうかで、受け止め方がまったく変わります。知識がないと「わざとやっている」と感じてしまい、関係が悪くなります。

3|介護保険の仕組み|ケアマネジャーと話しやすくなります

要介護度によって使えるサービスの量が決まること、ケアプランは変更できること、区分変更の申請ができること——制度の枠組みを知っていると、相談の質が上がります。

「もっとサービスを使いたい」と伝えるにも、何が可能かを知っていたほうが具体的に相談できます。

学ぶ方法|資格取得の前に、無料の選択肢があります

方法費用向いている人
自治体・地域包括支援センターの介護教室無料〜低額まず基礎を知りたい方。最初の選択肢
家族介護者向けの講座・交流会無料〜低額同じ立場の方と話したい方
ケアマネジャー・訪問介護員に教わる無料実際の介助を見てもらいながら学びたい方
介護職員初任者研修数万円〜十数万円体系的に学びたい方/将来仕事にする可能性がある方

まずは自治体の介護教室から

多くの自治体が、家族介護者向けの教室や講座を開催しています。費用がかからず、その地域で使えるサービスの情報も一緒に得られます。地域包括支援センターに問い合わせれば案内してもらえます。

訪問介護員に「教えてください」と言ってよいのです

訪問介護を利用している場合、介助の方法をその場で教わることができます。「移乗のとき、どう体を使えばいいですか」と聞けば、実際にやって見せてもらえます。

これが最も実用的で、費用もかかりません。

資格を取るなら|介護職員初任者研修が最も汎用性があります

項目内容
学ぶ内容10科目・130時間(老化の理解、認知症の理解、生活支援技術、介護保険制度など)
受講資格年齢・学歴・実務経験の制限はありません
期間短期集中で1か月程度/週1回で3〜4か月程度
費用数万円〜十数万円
家族介護での価値実技演習で介助を体験できます。介助される側も体験できます
仕事にする場合訪問介護に従事でき、実務者研修の科目免除にもつながります

「介護される側」を体験できるのが、この研修の大きな価値です。車いすに乗せられる、ベッドで体を動かされる——この経験があると、親御さんへの声のかけ方が変わります。

将来の選択肢としても無駄になりません

家族の介護をきっかけに、介護の仕事に就く方は少なくありません。初任者研修は、そのまま就職に使える資格です。有効期限もなく、更新も不要です。

介護する側が倒れないために

最後に、最も大切なことをお伝えします。

サインどう考えるか
眠れない/夜中に何度も起きる「頑張りが足りない」わけではありません。
抱え込みすぎているサインです
食欲がない/体重が減った
腰や膝が慢性的に痛む
親に強い怒りを感じることが増えた
誰にも相談していない

相談できる先

  • 地域包括支援センター——介護そのものの相談。無料
  • 担当のケアマネジャー——サービスの見直し。ショートステイの活用も相談できます
  • かかりつけ医/心療内科——自分の体調について
  • 自治体のこころの健康相談——気持ちが落ち込んでいるとき
  • 家族介護者の会・交流会——同じ立場の方と話せる場

「もっとサービスを使いたい」と伝えることは、わがままではありません。介護する側が続けられる形にすることが、結果として親御さんのためにもなります。

スキマかんごでは、介護助手・看護助手を含む1日単位ではたらける単発のお仕事と、掲載施設へ直接応募できる求人をご案内しています。家族の介護をきっかけに介護の仕事に関心を持たれた方が、まず1日だけ現場を体験してみることにも使えます。担当者からの営業連絡はありません。

よくある質問

親の介護をするのに資格は必要ですか?

必要ありません。家族が家族を介護するのに資格は求められません。まず行うべきは、お住まいの地域包括支援センターへの相談と、要介護認定の申請です。そのうえで担当のケアマネジャーとケアプランを作り、使えるサービスを組み立てていく流れになります。

それでも資格を取る意味はありますか?

3つの面で意味があります。①ボディメカニクス(体の仕組みを使った介助)を学ぶと自分の腰を守れます②認知症の中核症状と行動・心理症状を理解すると、対応が変わります③介護保険の仕組みを知るとケアマネジャーとの相談がしやすくなります。ただし資格取得より先に、地域包括支援センターへの相談を優先してください。

どの資格が家族の介護に向いていますか?

介護職員初任者研修が最も汎用性があります。130時間で介護の基礎を体系的に学べ、実技演習で介助を体験できます。将来的に介護の仕事に就く可能性がある方にも無駄になりません。ただし費用と130時間の時間がかかるため、まずは自治体や地域包括支援センターが開催する介護教室・家族介護者向け講座から始める方法もあります。

仕事と介護を両立するには何が使えますか?

育児・介護休業法に基づく制度があります。介護休業は対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割して取得できます。介護休暇は年5日(対象家族が2人以上の場合は年10日)まで取得できます。ほかに所定外労働の制限、時間外労働の制限、短時間勤務等の措置があります。要件や手続きは勤務先の就業規則および各制度の窓口でご確認ください。

最初にどこへ相談すればいいですか?

お住まいの地域を担当する地域包括支援センターです。市区町村が設置しており、高齢者やその家族の相談を無料で受け付けています。要介護認定の申請の案内、利用できるサービスの説明、ケアマネジャーの紹介まで一括して相談できます。どこが担当かは市区町村の窓口やホームページで確認できます。

要介護認定の申請はどうすればいいですか?

お住まいの市区町村の窓口で申請します。地域包括支援センターや居宅介護支援事業所が申請を代行できる場合もあります。申請後、認定調査と主治医意見書をもとに審査が行われ、要支援1〜2、要介護1〜5、非該当のいずれかが決まります。結果が出るまでに一定の期間がかかるため、早めの申請をおすすめします。

介護離職は避けたほうがいいですか?

慎重に判断してください。離職すると収入が途絶えるうえ、介護が終わったあとの再就職で年齢が壁になることがあります。まず勤務先の介護休業・介護休暇・短時間勤務などの制度を確認し、介護保険サービスで代替できる部分を切り分けてください。地域包括支援センターやケアマネジャーは、この切り分けの相談に乗ってくれます。

自分で全部やろうとすると、どうなりますか?

介護する側が体調を崩すケースが少なくありません。腰痛、睡眠不足、孤立感が重なると、介護そのものが続けられなくなります。眠れない、食欲がない、気持ちが落ち込むといったサインが出ている場合は、地域包括支援センターやかかりつけ医、自治体のこころの健康相談にご相談ください。抱え込まないことが最も重要です。

まとめ|資格より先に、相談と申請を進めてください

  • 親の介護に資格は必要ありません。最初にやるべきは地域包括支援センターへの相談と要介護認定の申請です
  • 介護休業は通算93日まで、3回を上限に分割取得できます。介護休暇は年5日(対象家族2人以上は年10日)
  • 介護休業は「自分で介護し続ける」ためではなく、サービスを組み立てて仕事に戻る体制を作るための期間です
  • 学ぶ価値があるのは①腰を守る介助技術②認知症への理解③介護保険の仕組みの3つ
  • 自治体の介護教室や、訪問介護員に教わる方法は無料です。まずここから始められます
  • 介護する側が倒れないことが最優先です。抱え込まず、相談してください

「まず勉強しなければ」と感じている方に、一つだけお伝えします。介護は知識で解決する問題ではなく、体制で解決する問題です。誰がどこまで担うのか、どのサービスで代替するのか——ここが決まると、必要な知識も見えてきます。

そして相談は、整理してからでなくて構いません。「何から始めればいいか分からない」という状態のまま、地域包括支援センターに電話してください。整理を手伝ってもらう場所です。

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執筆・監修:江波戸 純希(えばと よしき)

WEBBOX合同会社 代表社員/スキマかんご 編集責任者

  • 職業紹介責任者講習 修了
  • 有料職業紹介事業の許可を受けた株式会社GRADに在籍
  • 看護師専門の人材紹介サービス「ナースJJ」で、看護師の転職支援を担当
  • 現在は募集情報等提供事業として、看護・介護の求人情報サービス「スキマかんご」を運営

制度・報酬・求人条件は、厚生労働省をはじめとする行政および各サービスの公開情報を確認したうえで記載しています。制度は改定される場合があるため、最新の内容は各公式サイトでもご確認ください。

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