この記事の結論

この記事で分かること

  • 書類より先に、譲れない条件を数字にしてください。絶対に譲れないものは2つまでに絞ります。
  • 下がりやすいのは基本給より賞与と夜勤手当。二交代の夜勤手当は1回11,470円で、2010年からほぼ横ばいです。
  • 2024年4月から、求人票に「業務・就業場所の変更の範囲」の明示が必要になりました。配属科や施設の異動はここで分かります。
  • 労働基準法第15条第2項により、条件が事実と違えば即時に契約を解除できます。そのため求人票の保存と書面での受け取りが要ります。
  • 勤続10年の看護師の平均基本給与額は254,286円、平均税込給与総額は340,278円(日本看護協会・2025年度実績)。
  • 既卒採用者の離職率は16.1%(新卒は8.4%)。準備の目的は、この数字に入らないことです。

「何から準備すればいいのか分からない」
「履歴書を書き始めたけど、その前にやることがある気がする」
「前の転職で失敗したので、今度は慎重にいきたい」

看護師の転職準備というと、履歴書と職務経歴書から始める方が多いのですが、書類を書く前に決めておくことがあります。譲れない条件を、数字にしておくことです。

理由は、日本看護協会の調査にはっきり出ています。2024年度の離職率は、既卒採用者(転職して入職した人)が16.1%。新卒採用者の8.4%の約2倍です。転職そのものが失敗しやすいのではなく、条件を言葉にしないまま応募すると、入職後にずれが出るということです。

もう一つ、2024年4月から求人と労働条件のルールが変わりました。求人票に「業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」を明示することが必要になったのです。ここを読めるかどうかで、入職後の「話が違う」を大きく減らせます。

この記事では、看護師の求人情報サービスを運営する立場から、応募前にやる5つの準備を、法令と公的調査にもとづいて順番に整理します。

この記事で参照した公開情報(2026年8月31日確認)
・日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」(2026年3月31日公表)…2024年度の離職率は正規雇用看護職員11.0%、新卒採用者8.4%、既卒採用者16.1%。看護職員の確保のために導入している働き方は「日勤のみ」54.7%、「夜勤回数や夜勤時間、曜日が選択できる」44.1%、「短時間勤務」39.3%、「本人の希望の専門領域・部署への配属」38.7%
・同調査…2025年度実績の平均基本給与額は勤続10年の看護師(31〜32歳・非管理職)で254,286円、平均税込給与総額は340,278円。税込給与総額には通勤・住宅・家族・夜勤・当直・処遇改善に係る手当を含み、時間外手当は除く
・同調査…定額の夜勤手当は二交代制の夜勤1回あたり11,470円、三交代制の深夜勤5,211円、準夜勤4,300円で、2010年からほぼ横ばい
労働基準法第15条第1項…使用者は労働契約の締結に際し、労働条件を明示しなければなりません。同条第2項…明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は即時に労働契約を解除できます
2024年4月1日施行の改正…労働条件の明示事項に「就業場所・業務の内容」の変更の範囲が追加されました。あわせて職業安定法施行規則の改正により、求人申込みの際にも「従事すべき業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」等の明示が必要になりました

看護師の転職準備は、書類ではなく条件の言語化から始めます

準備の順番を間違えると、応募先を絞れません。おすすめの順番はこうです。

順番やることかかる時間の目安
譲れない条件を数字にする30分
いまの労働条件を書き出す(比較の基準)30分
求人票の「変更の範囲」を読む求人ごと5分
書類を作る2〜3時間
退職の段取りを逆算する30分

①と②を飛ばして④から入ると、「なんとなく良さそうな求人」に応募することになり、面接で聞くべきことが決まりません。

準備①|看護師の転職で譲れない条件を、数字にします

「残業が少ないところ」「人間関係がいいところ」は条件になりません。求人票と照合できないからです。次の形に置き換えてください。

言葉のまま数字にすると
残業が少ない月の時間外が◯時間以内
夜勤が負担夜勤は月◯回まで/日勤のみ
給料を下げたくない基本給◯万円以上、賞与◯か月分以上
休みが取れる年間休日◯日以上、有給取得率◯%以上
通いやすい片道◯分以内
教育を受けたい入職後◯か月のプリセプター制度があること

そのうえで、絶対に譲れないものを2つだけ選んでください。3つ以上を全部満たす求人はほとんど存在しません。2つに絞ると、応募先が現実的な数に収まります。

日本看護協会の調査では、看護職員の確保のために「日勤のみ」を導入している病院が54.7%あります。「夜勤回数や夜勤時間、曜日が選択できる」は44.1%、「短時間勤務」は39.3%です。求人票に書かれていなくても、交渉の余地がある条件だと分かります。

準備②|いまの労働条件を書き出すと、比較の基準ができます

転職で下がりやすいのは、基本給ではなく手当と賞与です。次の項目を給与明細と就業規則から拾ってください。

  • 基本給(手当を除いた額。求人票の「月給」と比べる対象はここです)
  • 夜勤手当の単価と月の回数
  • 賞与の支給月数(前年実績。求人票の「賞与◯か月」と比べます)
  • その他の手当(住宅・通勤・資格・処遇改善)
  • 年間休日数

比較の目安として、日本看護協会の2025年度実績では勤続10年の看護師(31〜32歳・非管理職)の平均基本給与額が254,286円、平均税込給与総額が340,278円です。この税込給与総額には通勤・住宅・家族・夜勤・当直・処遇改善の各手当が含まれ、時間外手当は含まれません。

夜勤手当の水準も押さえておくと交渉しやすくなります。

夜勤の種類1回あたりの定額の夜勤手当(2025年)2010年
二交代制の夜勤11,470円10,745円
三交代制の深夜勤5,211円5,053円
三交代制の準夜勤4,300円4,077円

出典:日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」。「定額の夜勤手当を支給している」と回答した病院の平均額(2026年8月31日確認)

夜勤手当は2010年からほぼ横ばいです。月給が上がっても夜勤手当は伸びていません。夜勤の回数で年収を作っている方は、この単価を必ず確認してください。年収の構造は勤務先別の看護師の給料で詳しく整理しています。

準備③|求人票の「変更の範囲」を読みます|2024年4月から明示が必要です

ここが、いま最も見落とされている確認ポイントです。

2024年4月1日から、労働条件の明示事項に「就業場所・業務の内容」の変更の範囲が加わりました。あわせて職業安定法施行規則の改正により、求人申込みの際にも「従事すべき業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」等を明示することが必要になっています。

「変更の範囲」とは、雇入れ直後だけでなく、将来の配置転換まで含めた、契約期間中に変わりうる範囲のことです。看護師の転職では、これが具体的に効いてきます。

確認すること書かれていなければ聞く内容
業務の変更の範囲配属科は変わりうるか。外来と病棟の異動はあるか
就業場所の変更の範囲系列の他施設・訪問部門への異動はあるか
雇入れ直後の配属入職時点でどの部署か(確定しているか)

「病棟希望で入ったのに外来に回された」「系列の施設に異動になった」は、この欄を読めば事前に分かります。逆に、範囲が広く書かれている求人は、そのとおり異動があると考えてください。

準備④|書類は、条件が決まってから作ります

条件が決まっていれば、志望動機は自動的に書けます。「いまの職場で満たせないもの」を裏返せばよいからです。

書き方はそれぞれ別記事にまとめています。

看護師免許証は、面接や入職時に原本の提示を求められることがあります。手元にあるか、先に確認しておいてください。紛失している場合は再交付に時間がかかります。

準備⑤|退職の段取りを先に逆算します

内定が出てから退職の相談を始めると、入職日が決まりません。応募前に次の3つを確認しておきます。

  • 就業規則の退職申出期限(1か月前か2か月前か)
  • 有給休暇の残日数(最終出勤日と退職日の差になります)
  • 賞与の支給日と在籍要件

この3つから逆算すると、内定後に提示できる入職可能日が決まります。詳しい組み立て方は看護師の転職時期で解説しています。

労働条件通知書は、求人票と照合してください

内定後に受け取る労働条件通知書は、必ず求人票と並べて読んでください。

労働基準法第15条第1項により、使用者は労働契約の締結に際して労働条件を明示しなければなりません。そして同条第2項により、明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は即時に労働契約を解除できます。

これは強い権利です。「入ってみたら話が違った」ときに、期間の定めのない契約でも2週間を待たずに辞められる根拠になります。ただし主張するには、明示された内容が残っていることが前提です。

  • 求人票は印刷するかスクリーンショットで保存しておく
  • 面接で口頭説明された条件はその日のうちにメモしておく
  • 労働条件通知書は入職前に書面で受け取る

面接で確認する10項目

条件を数字にしてあれば、聞くことは自然に決まります。

  • 配属予定の部署と、業務・就業場所の変更の範囲
  • 基本給と、月給に含まれる手当の内訳
  • 賞与の前年支給実績(「◯か月」の基準額が基本給か月給か)
  • 夜勤の回数・手当の単価・二交代か三交代か
  • 月の時間外の実績(申請の運用も含めて)
  • 年間休日数と有給の取得実績
  • 入職後の教育体制(年度途中入職の場合は特に)
  • 病棟の看護配置と夜勤の人数
  • 退職金制度の有無と支給条件(看護師の退職金
  • 入職可能日の相談

面接で答えなくてよい質問もあります。詳しくは看護師の面接で聞かれる質問をご覧ください。

よくある質問

看護師の転職準備は、いつから始めればいいですか?

入職希望日の4〜5か月前が目安です。内訳は、条件の整理と書類作成に2〜3週間、応募から内定まで1〜2か月、退職の申出期限(就業規則で1〜2か月前)と有給消化に1〜2か月です。4月入職を狙うなら、前年の11〜12月から動き始めると余裕があります。

看護師の転職で、最初にやるべき準備は何ですか?

譲れない条件を数字にすることです。「残業が少ない」ではなく「月の時間外が◯時間以内」という形にします。そのうえで絶対に譲れないものを2つに絞ってください。3つ以上を満たす求人はほとんどありません。条件が決まっていれば、志望動機も面接で聞くことも自動的に決まります。

求人票の「変更の範囲」とは何ですか?

雇入れ直後だけでなく、将来の配置転換まで含めた、契約期間中に変わりうる範囲のことです。2024年4月1日から、労働条件の明示事項に「就業場所・業務の内容」の変更の範囲が加わり、職業安定法施行規則の改正で求人申込みの際にも明示が必要になりました。看護師の場合、「配属科が変わりうるか」「系列の他施設へ異動があるか」がここに書かれます。書かれていなければ面接で確認してください。

入職したら求人票と条件が違いました。どうすればいいですか?

労働基準法第15条第2項により、明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は即時に労働契約を解除できます。期間の定めのない契約でも、2週間を待つ必要がありません。ただし主張するには明示内容の記録が要ります。求人票の保存、面接での口頭説明のメモ、労働条件通知書の書面での受け取りを、応募の段階から習慣にしてください。

転職すると給料は下がりますか?

下がるとすれば、基本給より賞与と夜勤手当です。日本看護協会の2025年度実績では、勤続10年の看護師(31〜32歳・非管理職)の平均基本給与額が254,286円、平均税込給与総額が340,278円です。夜勤手当は二交代の夜勤1回あたり11,470円で、2010年からほぼ横ばいです。求人票の「月給」に何が含まれているかを分解してから比べてください。

転職して失敗する人は多いのですか?

日本看護協会の2024年度の調査では、既卒採用者の離職率は16.1%で、新卒採用者の8.4%の約2倍でした。ただしこれは転職が悪いという意味ではなく、条件を整理しないまま応募すると入職後にずれが出る、ということだと考えています。準備のうち①条件の数値化と③求人票の変更の範囲の確認は、ここに直接効きます。

在職中に転職活動をしてもいいですか?

問題ありません。むしろ収入が途切れないぶん、条件を妥協せずに選べます。面接の日程は、シフトの希望休や有給で調整している方が多いです。ただし退職を申し出るのは内定が出てからにしてください。先に伝えると、条件が折り合わなかったときに戻れなくなります。

まとめ|看護師の転職準備は、条件を数字にすることから始まります

  • 書類より先に、譲れない条件を数字にしてください。絶対に譲れないものは2つまでに絞ります
  • いまの労働条件を書き出すと比較の基準ができます。下がりやすいのは基本給より賞与と夜勤手当です
  • 2024年4月から、求人票に「業務・就業場所の変更の範囲」の明示が必要になりました。配属科や施設の異動はここで分かります
  • 労働条件通知書は求人票と照合してください。労働基準法第15条第2項により、条件が事実と違えば即時に契約を解除できます
  • そのために求人票の保存・口頭説明のメモ・書面での受け取りを習慣にしてください
  • 既卒採用者の離職率は16.1%(新卒は8.4%)。準備の目的は、この数字に入らないことです
  • 「日勤のみ」を導入している病院は54.7%。求人票になくても交渉の余地があります

準備ができたら、動く時期を決めます。賞与と有給から逆算する方法は看護師の転職時期、転職サイトを使うかどうかの判断は看護師の転職エージェントをご覧ください。

条件が決まったら、どのサービスを使うかを選びます。看護師転職サイトのおすすめで、厚労省の公開データから選ぶ手順を解説しています。

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執筆・監修:江波戸 純希(えばと よしき)

WEBBOX合同会社 代表社員/スキマかんご 編集責任者

  • 職業紹介責任者講習 修了
  • 有料職業紹介事業の許可を受けた株式会社GRADに在籍
  • 看護師専門の人材紹介サービス「ナースJJ」で、看護師の転職支援を担当
  • 現在は募集情報等提供事業として、看護・介護の求人情報サービス「スキマかんご」を運営

制度・報酬・求人条件は、厚生労働省をはじめとする行政および各サービスの公開情報を確認したうえで記載しています。制度は改定される場合があるため、最新の内容は各公式サイトでもご確認ください。

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