この記事の結論
この記事で分かること
- 転職時期を決めるのは求人数ではなく、①賞与の支給日 ②退職申出の期限 ③有給残日数の3つです。すべて就業規則に書いてあります。
- 賞与の支給日在籍要件は有効です(大和銀行事件・最高裁昭和57年10月7日判決)。支給日前に辞めると受給権がありません。
- 法律上は民法第627条第1項により申入れから2週間で退職できます。就業規則の「1〜2か月前」は逆算の起点です。
- 有給が20日残っていれば最終出勤日の約1か月後が退職日。賞与の支給日と噛み合わせられます。
- 4月入職を狙うなら、動き出すのは前年の11〜12月です。
- 既卒採用者の離職率は16.1%で、新卒採用者8.4%の約2倍(日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」)。焦って決めないための時間を確保することが逆算の意味です。
- 「日勤のみ」を導入している病院は54.7%。求人票になくても面接で確認できます。
「転職するなら何月がいいの?」
「ボーナスをもらってから辞めたいけど、いつ言えばいい?」
「4月入職を狙うなら、もう動かないと間に合わない?」
看護師の転職時期を「1月と6月がおすすめ」と書いている記事は多いのですが、なぜその月なのかを、就業規則の仕組みから説明しているものはほとんどありません。
結論を先にお伝えすると、時期を決めているのは求人の数ではなく、①賞与の支給日、②就業規則が定める退職申出の期限、③残っている有給休暇の日数の3つです。この3つを自分の職場の数字に当てはめれば、動くべき月は自動的に決まります。
そしてもう一つ、知っておいてほしい数字があります。日本看護協会の調査では、既卒採用者(転職して入職した人)の離職率は16.1%。新卒採用者の8.4%の約2倍です。急いで決めた転職ほど、次も続きません。
この記事では、看護師の求人情報サービスを運営する立場から、転職時期を自分で計算する手順を、法令と公的調査だけで組み立てます。
この記事で参照した公開情報(2026年8月31日確認)
・日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」(2026年3月31日公表)…2024年度の離職率は正規雇用看護職員11.0%、新卒採用者8.4%、既卒採用者16.1%。全国の病院8,022施設を対象に2025年10月1日〜11月17日に実施、有効回収数3,502(有効回収率43.7%)
・同調査…看護職員の確保のために導入している働き方は「日勤のみ」54.7%、「夜勤回数や夜勤時間、曜日が選択できる」44.1%、「短時間勤務」39.3%
・民法第627条第1項…期間の定めのない雇用では、各当事者はいつでも解約の申入れをすることができ、申入れの日から2週間を経過することによって終了します
・大和銀行事件(最高裁 昭和57年10月7日判決)…賞与を支給日に在籍する者に支給するという就業規則の定めは、その内容に合理性があるときは有効とされ、支給日前に退職した者は賞与の受給権を有しないと判断されました
・厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」…看護師の年間賞与その他特別給与額は85万6,400円
看護師の転職時期を決めているのは、求人数ではありません
「4月入職の求人が多いから、1月に動くとよい」という説明をよく見かけます。求人が増えるのは事実ですが、あなたが動ける月を決めているのは、求人側ではなく、いまの職場の就業規則です。
順番に見ていきます。決める要素は3つだけです。
| 要素 | どこに書いてあるか | 効き方 |
|---|---|---|
| ①賞与の支給日と在籍要件 | 就業規則(賃金規程) | 支給日前に辞めると、数十万円が消えます |
| ②退職を申し出る期限 | 就業規則(退職の規定) | 「1か月前」「2か月前」が多く、逆算の起点になります |
| ③残っている有給休暇 | 給与明細・勤怠システム | 最終出勤日と退職日の差になります |
この3つを紙に書き出すと、動くべき月は計算で出ます。求人サイトの「おすすめ時期」を読むより確実です。
①賞与|看護師の転職時期が1月・6月と言われる本当の理由
多くの病院は賞与の支給を6月と12月に置き、賃金規程に「支給日に在籍する者に支給する」という条件を付けています。これが「支給日在籍要件」です。
この定めが有効かどうかは、最高裁で判断が示されています。大和銀行事件(最高裁 昭和57年10月7日判決)では、賞与を支給日に在籍する者に支給するという就業規則の定めは、その内容に合理性があるときは有効とされ、支給日前に退職した者は賞与の受給権を有しないと判断されました。
つまり、支給日の前日に辞めれば、その回の賞与はゼロになり得ます。これは違法ではありません。
看護師の年間賞与その他特別給与額は、厚生労働省の賃金構造基本統計調査で85万6,400円です。年2回なら1回あたり40万円台。退職日を数日ずらすかどうかで、この金額が動きます。
確認する順番はこうです。①賃金規程で賞与の支給日を調べる → ②「支給日に在籍」の条件があるか確認する → ③支給日の翌日以降を退職日に置けるか逆算する。就業規則は、労働者が見られる状態に置くことになっています。
ただし注意点があります。規程によっては「支給日に在籍し、かつ退職の申出をしていないこと」と定めている場合や、算定対象期間の在籍で減額する場合があります。支給日だけを見て決めず、条文そのものを読んでください。
②退職の申出|法律は2週間ですが、就業規則は1〜2か月前が普通です
民法第627条第1項により、期間の定めのない雇用では、労働者はいつでも退職を申し入れることができ、申入れの日から2週間を経過すれば雇用契約は終了します。これは職場が拒否できません。
一方、多くの病院の就業規則は「退職しようとする日の1か月前(または2か月前)までに届け出ること」と定めています。法律上は2週間で辞められますが、円満に進めたいなら就業規則の期限を起点に逆算するのが現実的です。
シフト制の職場では、勤務表の作成サイクルも効いてきます。翌月分の勤務表が前月中旬に確定する職場なら、その前に伝えないと調整が一段面倒になります。
③有給休暇|最終出勤日と退職日は同じではありません
残っている有給休暇を消化する場合、最終出勤日のあとに有給の期間が続き、その最後の日が退職日になります。20日残っていれば、最終出勤日の約1か月後が退職日です。
ここが賞与と噛み合います。支給日が6月10日で有給が20日残っているなら、5月中旬に最終出勤日を置いても、退職日は6月中旬にできます。賞与を受け取ったうえで、実質的に5月中旬で現場を離れられる計算になります。
ただし、有給の取得時季について使用者には時季変更権があります。長期の連続取得は事前の相談が要ります。手取りの計算については看護師の手取りもあわせてご覧ください。
看護師の転職時期を逆算する|4月入職のスケジュール例
就業規則が「1か月前までに届出」、有給が20日残っている場合の例です。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 10〜11月 | 就業規則で①賞与支給日 ②退職申出の期限を確認。有給残日数を数える |
| 12月 | 賞与を受け取る。応募先を絞り、書類を用意する |
| 1月 | 応募・面接。内定が出たら入職日を相談する |
| 2月上旬 | 退職を申し出る(1か月前+有給20日分を見込む) |
| 2月中旬〜3月 | 引き継ぎ → 最終出勤日 → 有給消化 |
| 3月31日 | 退職日 |
| 4月1日 | 入職 |
就業規則の定めと有給残日数によって前後します。あくまで組み立て方の例です
逆に言えば、4月入職を狙うなら、動き出すのは前年の11〜12月です。1月に探し始めると、退職の手続きが3月に食い込みます。
急いで決めた転職は、続きません|既卒採用者の離職率は16.1%
ここが、時期の話でいちばん大事な点です。日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」による2024年度の離職率は次のとおりです。
| 区分 | 2024年度の離職率 | 前年度比 |
|---|---|---|
| 正規雇用看護職員(全体) | 11.0% | 0.3ポイント減 |
| 新卒採用者 | 8.4% | 0.4ポイント減 |
| 既卒採用者 | 16.1% | ― |
出典:日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」(2026年3月31日公表)。全国の病院8,022施設を対象、有効回収数3,502(2026年8月31日確認)
転職して入った人の離職率は16.1%で、新卒の8.4%の約2倍です。入職して1年以内に、6人に1人が辞めている計算になります。
理由は単純で、「早く辞めたい」が先に立つと、次の職場を条件で選びきれないからです。時期を逆算しておく最大の意味は、賞与を取ることより、焦って決めない時間を確保することにあります。
「日勤のみ」は交渉できます|看護師の確保策として過半数の病院が導入
時期と一緒に考えてほしいのが、条件の交渉余地です。同じ調査では、看護職員(正職員)を確保するために導入している働き方が公表されています。
| 導入している働き方 | 割合 |
|---|---|
| 日勤のみ | 54.7% |
| 夜勤回数や夜勤時間、曜日が選択できる | 44.1% |
| 短時間勤務 | 39.3% |
| 本人の希望の専門領域・部署への配属 | 38.7% |
出典:同上(2026年8月31日確認)
半数を超える病院が「日勤のみ」の働き方を用意しています。求人票に書かれていなくても、面接で確認する価値があります。夜勤の条件については夜勤専従の看護師もご覧ください。
年度途中の転職は不利ですか
不利にはなりません。看護職員の欠員は年度を問わず出ますし、4月に合わせると応募が集中します。
むしろ考えるべきは教育体制です。4月入職は新人と同時期なので研修が組まれていることが多く、年度途中は現場でのOJT中心になりやすい傾向があります。ブランクがある方や、経験のない診療科へ移る方は、「年度途中に入った場合、どういう教育を受けられるか」を面接で確認してください。
ブランクからの復職は看護師のブランク復職で整理しています。
転職時期を決める前に確認する6項目
- 賞与の支給日と、支給日在籍要件の有無(賃金規程)
- 退職を申し出る期限(就業規則。1か月前か2か月前か)
- 有給休暇の残日数(最終出勤日と退職日の差になります)
- 勤務表の確定サイクル(伝えるタイミングに影響します)
- 退職金の支給条件(勤続年数の節目が近いかどうか。看護師の退職金)
- 次の職場の入職可能日(内定後に相談できます)
よくある質問
看護師の転職時期は何月がおすすめですか?
一律の正解はありません。決めるのは賞与の支給日・退職申出の期限・有給残日数の3つで、これは職場ごとに違います。賞与が6月と12月に支給される職場であれば、支給日の翌日以降を退職日にできるよう逆算すると、結果として1月・7月に動き出す形になりやすい、というだけです。4月入職を狙うなら、前年の11〜12月から準備を始めると余裕があります。
ボーナスをもらってすぐ辞めるのは問題ありませんか?
法律上の問題はありません。賞与は支給日に在籍していれば受給権が発生します(大和銀行事件・最高裁昭和57年10月7日判決)。ただし賃金規程で「支給日に在籍し、かつ退職の申出をしていないこと」を要件にしている場合や、算定対象期間の在籍日数で減額する場合があります。条文を確認してから退職日を決めてください。
就業規則に「2か月前まで」とありますが、守らないといけませんか?
民法第627条第1項により、申入れから2週間で雇用契約は終了します。就業規則の期限は法律を上回って労働者を拘束するものではありません。ただし引き継ぎや勤務表の調整を考えると、就業規則の期限に沿って伝えるほうが円満に進みます。どうしても早く辞める必要がある場合の手順は看護師はすぐ辞められる?で解説しています。
有給を全部使ってから辞められますか?
退職日までに消化する形であれば可能です。最終出勤日のあとに有給の期間を置き、その最終日を退職日にします。ただし使用者には時季変更権があるため、長期の連続取得は早めに相談してください。退職日を過ぎた分は消滅します。残日数を先に数えてから、退職日を決める順番が安全です。
年度途中に転職すると不利になりますか?
採用の可否という意味では不利になりません。欠員は年度を問わず発生します。違いが出るのは教育体制で、4月入職は集合研修が組まれていることが多いのに対し、年度途中は現場でのOJT中心になりやすい傾向があります。経験のない領域へ移るなら、入職後の教育の中身を面接で確認してください。
転職活動はどのくらいの期間がかかりますか?
応募から内定までのほかに、退職の申出期限(1〜2か月)と有給消化の期間が必要です。有給が20日残っていれば、最終出勤日から退職日まで約1か月かかります。内定から入職まで2〜3か月を見込んでおくと、退職の交渉に無理が出ません。準備の手順は看護師の転職準備で解説しています。
求人が多い時期に応募したほうが受かりやすいですか?
求人が多い時期は応募者も増えます。数の多さより、自分の条件に合う求人が出ているかで判断してください。日本看護協会の調査では、看護職員の確保のために「日勤のみ」を導入している病院が54.7%、「夜勤回数や夜勤時間、曜日が選択できる」が44.1%あります。募集の時期より、こうした働き方を用意しているかのほうが、入職後の続けやすさに効きます。
まとめ|看護師の転職時期は、就業規則の3つの数字で決まります
- 決めるのは求人数ではなく、①賞与の支給日 ②退職申出の期限 ③有給残日数の3つです
- 賞与の支給日在籍要件は有効です(大和銀行事件・最高裁昭和57年10月7日判決)。支給日前に辞めると受給権がありません
- 法律上は民法第627条第1項により2週間で退職できます。就業規則の「1〜2か月前」は逆算の起点として使ってください
- 有給が20日残っていれば、最終出勤日の約1か月後が退職日になります。賞与の支給日と噛み合わせられます
- 4月入職を狙うなら、動き出すのは前年の11〜12月です
- 既卒採用者の離職率は16.1%で、新卒の8.4%の約2倍。焦って決めないための時間を確保することが、時期を逆算する最大の意味です
- 「日勤のみ」を導入している病院は54.7%。求人票になくても面接で確認できます
時期が決まったら、次は準備です。書類と条件の整理は看護師の転職準備、転職サイトを使うかどうかは看護師の転職エージェントをご覧ください。
使うサービスの選び方は看護師転職サイトのおすすめをご覧ください。事業者ごとの就職者数と6か月以内の離職者数は、厚生労働省のサイトで公開されています。
執筆・監修:江波戸 純希(えばと よしき)
WEBBOX合同会社 代表社員/スキマかんご 編集責任者
- 職業紹介責任者講習 修了
- 有料職業紹介事業の許可を受けた株式会社GRADに在籍
- 看護師専門の人材紹介サービス「ナースJJ」で、看護師の転職支援を担当
- 現在は募集情報等提供事業として、看護・介護の求人情報サービス「スキマかんご」を運営
制度・報酬・求人条件は、厚生労働省をはじめとする行政および各サービスの公開情報を確認したうえで記載しています。制度は改定される場合があるため、最新の内容は各公式サイトでもご確認ください。
※スキマかんごは募集情報等提供事業です。求人者・求職者間の雇用のあっせん(職業紹介)は行いません。応募は掲載施設へ直接お届けしています。
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