この記事の結論
この記事で分かること
- 1社に1〜数名の職種。欠員が出たときにしか募集されません。探し方の問題ではありません。
- 看護師免許で応募できる求人もありますが、保健師を要件とする求人も多くあります。
- 採用で見られるのはメンタルヘルス対応・健診業務・説明と調整の経験・文書作成・一人で動けるかです。
- 病棟経験は「技術」ではなく「汎用的な力」に翻訳して書いてください。点滴や急変対応は企業選考では効きにくくなります。
- 統計に「企業看護師」の区分はありません。基本給と賞与を求人ごとに確認してください。
- 夜勤手当(年約39万円)は乗りません。企業規模による給与体系と合わせて判断を。
「企業看護師の求人、探しても全然見つからない」
「保健師を取ってからのほうがいい?」
「年収は上がるの?下がるの?」
求人が見つからないのは、探し方の問題ではありません。1社に1〜数名しかいない職種だからです。病棟看護師のように常時募集がかかる職種ではなく、欠員が出たときにだけ募集される、という性質があります。
そして年収について。厚生労働省の統計に「企業看護師」という区分はありません。ただし構造から言えることはあります。夜勤手当にあたる月3万2,700円が乗らないため、病棟から移ると年収は下がる方向に働きます。
この記事では、看護師の求人情報サービスを運営する立場から、採用で見られること、保健師資格の必要性、求人の探し方、そして年収の考え方を整理します。
この記事で参照した公開情報(2026年8月27日確認)
・「企業看護師」「産業看護師」は資格の名称ではありません。看護師免許があれば就ける職場のひとつです
・保健師は保健師助産師看護師法に基づく国家資格です。ストレスチェックの実施者について、労働安全衛生規則第52条の10第1項は①医師 ②保健師 ③厚生労働大臣が定める研修を修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士又は公認心理師と定めています
・労働安全衛生法により、常時50人以上の労働者を使用する事業場には産業医の選任、衛生管理者の選任、衛生委員会の設置、ストレスチェックの実施などが義務づけられています(50人未満は産業医の選任が努力義務)
・厚生労働省「令和7(2025)年賃金構造基本統計調査」における看護師:推定年収 524万7,200円/きまって支給する現金給与額 月36万5,900円/所定内給与額 33万3,200円(差の3万2,700円が超過労働給与額)/年間賞与 85万6,400円
・同調査の企業規模別:1,000人以上 569万8,700円(年間賞与105万7,100円)/100〜999人 506万2,800円/10〜99人 469万8,200円
・同調査に、勤務先の種別(企業の健康管理室など)ごとの集計はありません
採用条件・雇用形態・給与は企業により大きく異なります。この記事は一般的な傾向を整理するもので、特定の求人の条件を示すものではありません。
結論|「探して見つける」より「準備して待つ」職種です
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 求人の数 | 1社に1〜数名。欠員時にのみ募集されます |
| 必要な資格 | 看護師免許(保健師を要件とする求人も多い) |
| 見られる経験 | メンタルヘルス対応、健診業務、説明・調整の経験 |
| 年収 | 夜勤手当が乗らないため、病棟からは下がる方向 |
| 雇用形態 | 正社員のほか、契約社員・派遣での募集もあります |
採用で見られること
| 見られる点 | 理由 |
|---|---|
| メンタルヘルスに関わった経験 | 業務の比重が年々大きくなっています |
| 健診・保健指導の経験 | 健診の運営が主要業務のひとつです |
| 説明・調整の経験 | 人事・総務・産業医との協働が前提です |
| パソコンでの文書作成 | 資料作成・報告書が業務に含まれます |
| 一人で判断して動けるか | 一人職場が珍しくありません |
| 企業での就業経験 | ビジネスの場での立ち居振る舞い |
病棟経験の書き方を変えてください
「点滴が得意」「急変対応の経験がある」は、企業の選考ではあまり効きません。同じ経験でも、書き方を変える必要があります。
| 病棟での経験 | 企業向けの書き方 |
|---|---|
| 患者・家族への説明 | 専門的な内容を、相手に合わせて分かりやすく説明した経験 |
| 退院支援・多職種連携 | 関係者と調整し、方針をまとめた経験 |
| 精神科・心療内科の経験 | メンタル不調への対応経験 |
| 健診センターでの勤務 | 健診の運営、結果の説明 |
| プリセプター・委員会 | 教育・仕組みづくりに関わった経験 |
| 記録・報告書の作成 | 文書作成の実務 |
職務経歴書の書き方は看護師の職務経歴書の書き方、志望動機は看護師の志望動機の書き方にまとめています。
保健師資格は必要か
看護師資格のみで働ける求人もあります。ただし、保健師を要件とする求人が多いのも事実です。
| 看護師のみ | 保健師あり | |
|---|---|---|
| 応募できる求人 | 限られます | 広がります |
| ストレスチェックの実施者 | 所定の研修を修了すれば可 | 研修の要件なし |
| 特定保健指導 | 一定の要件があります | 担当しやすい |
| 取得の負担 | — | 保健師養成課程への進学が必要です |
取るなら「入る前」か「入ってから」か
保健師資格を取るには、保健師養成課程(大学の選択課程、大学院、専門学校など)に進む必要があります。働きながら取得するのは、実務者研修や認定資格とは負担の種類が違います。
まず看護師資格で応募できる求人を探し、入ってから必要性を判断するという順序も現実的です。ストレスチェックの実施者については、看護師でも所定の研修で対応できます。
求人の探し方
「企業看護師」だけで探すと見つかりません。次の言い方でも探してみてください。
- 産業看護師/産業保健師/健康管理室
- 健診センター・人間ドック(採血・検査の実務があります)
- 健康保険組合(特定保健指導)
- CRC(治験コーディネーター)・CRA(SMO・CRO・製薬企業)
- 医療相談・受診相談のコールセンター
- クリニカルスペシャリスト(医療機器メーカー)
- コールセンターのSV、医療系サービスの企画職
企業の採用ページで直接募集されることもあります。入りたい企業が決まっているなら、その企業の採用情報を定期的に見る方法も有効です。
看護師以外の職種への広がりは看護師以外の仕事、一般企業への転職全般は看護師から一般企業へをご覧ください。
年収の考え方
厚生労働省の統計に「企業看護師」の区分はありません。出典のない平均年収の数字は根拠になりません。構造から考えてください。
| 要素 | 病棟 | 企業 |
|---|---|---|
| 夜勤手当・交替手当 | 月3万2,700円(年約39万円) | ありません |
| 基本給 | 医療機関の給与体系 | その企業の給与体系(他の総合職と同じ体系のことも) |
| 賞与 | 規模により年62万〜105万円 | 企業の業績連動のことがあります |
| 昇給 | 勤続・役職 | 企業の評価制度による |
比較の基準になる数字
| 比較対象 | 推定年収 |
|---|---|
| 看護師 全体平均 | 524万7,200円 |
| 企業規模1,000人以上 | 569万8,700円 |
| 企業規模100〜999人 | 506万2,800円 |
| 企業規模10〜99人 | 469万8,200円 |
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(看護師)。いずれも所得税等を控除する前の額。
大企業の健康管理室であれば、企業規模としては1,000人以上の区分に近くなります。その一方で夜勤手当は乗りません。この2つを合わせて考えると、「大きく上がることも、大きく下がることも、どちらもあり得る」というのが実際です。
確認すべき10項目
- □ 雇用形態(正社員・契約社員・派遣)
- □ 基本給と、固定残業代の有無
- □ 賞与は年何か月分か。業績連動か
- □ 看護職は何名配置されているか
- □ 産業医は常勤か非常勤か
- □ 保健師資格が必須か
- □ ストレスチェックの実施者を担当するか
- □ 事業場の規模(常時50人以上か)
- □ 健診の運営をどこまで担当するか
- □ 休職・復職支援に関わるか
面接での聞き方は看護師の面接で聞かれる質問、手取りの計算は看護師の手取りはいくら?をご覧ください。
戻る道を残しておくかどうか
不利益になりやすい点なので、書いておきます。企業看護師は、看護技術から離れる働き方です。
- 医療処置の機会がほとんどありません
- 離れる期間が長いほど、急性期病棟への復帰は準備が必要になります
- 数年後に病棟へ戻る可能性を残すなら、その前提で計画を立ててください
- ブランクからの復職の考え方は看護師のブランク復職が参考になります
よくある質問
企業看護師になるには何が必要ですか?
看護師免許があれば応募できる求人があります。ただし保健師を要件とする求人も多くあります。採用ではメンタルヘルスに関わった経験、健診・保健指導の経験、説明や調整の経験、パソコンでの文書作成、一人で判断して動けるかが見られます。
なぜ求人が見つからないのですか?
1社に1〜数名しかいない職種だからです。病棟看護師のように常時募集がかかるものではなく、欠員が出たときにだけ募集されます。「企業看護師」だけで探さず、産業看護師、産業保健師、健康管理室、健診センター、健康保険組合、CRC・CRA、医療相談のコールセンターといった言い方でも探してみてください。
保健師の資格は取ったほうがよいですか?
応募できる求人は広がります。ただし保健師資格を取るには保健師養成課程への進学が必要で、働きながらの取得は負担が大きい選択です。ストレスチェックの実施者については、看護師でも厚生労働大臣が定める研修を修了すれば対応できます。まず看護師資格で応募できる求人を探し、入ってから必要性を判断するという順序も現実的です。
年収は上がりますか、下がりますか?
厚生労働省の統計に「企業看護師」の区分はないため、平均額を示すことはできません。構造としては、夜勤手当にあたる月3万2,700円(年約39万円)が乗らない一方、大企業であれば給与体系そのものが高い場合があります。大きく上がることも下がることもあり得るため、求人ごとに基本給と賞与を確認してください。
病棟での経験はどう書けばよいですか?
技術ではなく、汎用的な力に翻訳して書いてください。患者・家族への説明は「専門的な内容を相手に合わせて分かりやすく説明した経験」、退院支援や多職種連携は「関係者と調整し方針をまとめた経験」、プリセプターや委員会は「教育・仕組みづくりに関わった経験」といった形です。精神科・心療内科の経験があれば、メンタル不調への対応経験として前に出してください。
未経験でも採用されますか?
産業保健の経験がない状態からの採用もあります。ただし一人職場が珍しくないため、自分で判断して動けるかが重視されます。応募前に「看護職は何名配置されているか」「産業医は常勤か非常勤か」を確認し、入職後にどう業務を覚えるのかを面接で聞いてください。
契約社員の求人が多いのはなぜですか?
健康管理室の体制は企業によって位置づけが異なり、正社員のポストとして設けていない企業もあります。雇用形態は求人ごとに確認してください。契約社員や派遣の場合、契約期間、更新の有無、正社員登用の可能性もあわせて確認しておくと安心です。
病棟に戻れなくなりますか?
戻れなくなるわけではありませんが、医療処置の機会がほとんどないため、離れる期間が長いほど急性期病棟への復帰には準備が必要になります。数年後に病棟へ戻る可能性を残しておきたい場合は、その前提で在籍期間を考えておくとよいです。
まとめ|求人は少ない。だから準備して待つ職種です
- 1社に1〜数名の職種。欠員時にしか募集されません
- 看護師免許で応募できる求人もあります。保健師必須の求人も多くあります
- 採用で見られるのはメンタルヘルス・健診・説明と調整・文書作成・一人で動けるか
- 病棟経験は「技術」ではなく「汎用的な力」に翻訳して書いてください
- 統計に「企業看護師」の区分はありません。基本給と賞与を求人ごとに確認を
- 夜勤手当(年約39万円)は乗りません。企業規模による給与体系と合わせて判断してください
この職種は、募集が出たときに動けるかどうかで決まります。職務経歴書を「企業向けの書き方」で先に用意しておくことが、実質的な準備になります。仕事の中身は企業看護師とはをご覧ください。
執筆・監修:江波戸 純希(えばと よしき)
WEBBOX合同会社 代表社員/スキマかんご 編集責任者
- 職業紹介責任者講習 修了
- 有料職業紹介事業の許可を受けた株式会社GRADに在籍
- 看護師専門の人材紹介サービス「ナースJJ」で、看護師の転職支援を担当
- 現在は募集情報等提供事業として、看護・介護の求人情報サービス「スキマかんご」を運営
制度・報酬・求人条件は、厚生労働省をはじめとする行政および各サービスの公開情報を確認したうえで記載しています。制度は改定される場合があるため、最新の内容は各公式サイトでもご確認ください。
※スキマかんごは募集情報等提供事業です。求人者・求職者間の雇用のあっせん(職業紹介)は行いません。応募は掲載施設へ直接お届けしています。
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