この記事の結論
この記事で分かること
- 「企業看護師」「産業看護師」は資格の名称ではありません。働く場所の呼び方で、どちらも同じものを指します。
- 常時50人以上の事業場に課された労働安全衛生法上の義務(産業医の選任・衛生委員会・ストレスチェックなど)が、この仕事の土台です。
- 業務は健診の運営・保健指導・メンタルヘルス対応・産業医との連携・衛生委員会・救急対応の6つ。
- 看護師でも、厚生労働大臣が定める研修を修了すればストレスチェックの実施者になれます(労働安全衛生規則第52条の10)。
- 産業医は医師でなければならず、看護師・保健師はなれません。連携する立場です。
- 一人職場が珍しくなく、求人も多くありません。健診センターや治験関連も含めて探すと選択肢が広がります。
「企業看護師って、実際どんな仕事をしているの?」
「産業看護師とは違うの?」
「看護師でもなれる?保健師じゃないとダメ?」
まず名前の整理から。「企業看護師」も「産業看護師」も資格の名称ではありません。企業の健康管理部門などで働く看護師の呼び方で、どちらも同じものを指して使われています。
そして、この仕事が成り立つ背景には法律があります。労働安全衛生法により、常時50人以上の労働者を使用する事業場には、産業医の選任、衛生管理者の選任、衛生委員会の設置、ストレスチェックの実施などが義務づけられています。企業看護師の業務は、この枠組みの中にあります。
もう一つ知っておきたいのが、ストレスチェックの実施者になれるのは、医師と保健師、そして厚生労働大臣が定める研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師です。看護師でも、研修を修了すれば実施者になれます。
この記事では、看護師の求人情報サービスを運営する立場から、実際の業務、病院との違い、勤務先の種類、そして向き不向きを整理します。
この記事で参照した公開情報(2026年8月27日確認)
・「企業看護師」「産業看護師」は資格の名称ではありません。企業等の健康管理部門で働く看護師の呼称です
・労働安全衛生法により、常時50人以上の労働者を使用する事業場には、産業医の選任、衛生管理者の選任、衛生委員会の設置、ストレスチェックの実施、健康診断結果等の報告が義務づけられています。50人未満の事業場では産業医の選任は努力義務とされています
・産業医は医師でなければならず、看護師・保健師が産業医になることはできません
・ストレスチェックの実施者(労働安全衛生規則第52条の10第1項):①医師 ②保健師 ③厚生労働大臣が定める研修を修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士又は公認心理師
・同規則により、ストレスチェックを受ける労働者の解雇・昇進・異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、ストレスチェックの実施の事務に従事してはならないとされています
・厚生労働省「令和7(2025)年賃金構造基本統計調査」における看護師の推定年収は524万7,200円。勤務先の種別ごとの集計は公表されていません
法令の適用範囲・義務の内容は事業場の規模や業種により異なり、改正されることもあります。実際の業務範囲・採用条件は企業により大きく異なります。個別の取扱いは応募先および所轄の労働基準監督署にご確認ください。
結論|「治療する看護」ではなく「働き続けられるようにする看護」です
| 病院 | 企業 | |
|---|---|---|
| 相手 | 患者さん | 働いている従業員(基本的に健康な方) |
| 目的 | 治療・回復 | 健康の維持と、働き続けられる状態を保つこと |
| 根拠 | 医療法・診療報酬など | 労働安全衛生法 |
| 夜勤 | あります | ありません |
| 休日 | 交替制 | 土日祝が休みの企業が多い |
| 医療処置 | 中心業務 | ほとんどありません |
看護技術を使う場面はほとんどありません。ここに戸惑う方と、やりがいを感じる方に分かれます。
仕事内容|6つに整理できます
1.健康診断の運営
- 実施計画の作成、受診案内、受診勧奨
- 結果の整理と、有所見者の把握
- 再検査・精密検査の受診勧奨とフォロー
- 労働基準監督署への報告書類の作成補助
「未受診者を減らす」ことが具体的な成果になります。看護というより運営に近い業務です。
2.保健指導・健康相談
健康診断の結果に基づく保健指導や、日常的な健康相談を担当します。特定保健指導を担当することもあります。
3.メンタルヘルス対応
- ストレスチェックの実施と、結果に基づく対応
- 不調のある方の相談対応
- 休職・復職の支援(産業医・人事との連携)
- 職場環境の改善提案
この分野の比重が年々大きくなっています。企業看護師の求人でメンタルヘルスの経験が問われるのはこのためです。
4.産業医との連携
産業医は多くの企業で非常勤(月1回など)です。その間をつなぐのが企業看護師の役割になります。面談の調整、資料の準備、産業医の指示に基づく対応などを担当します。
5.衛生委員会の運営
常時50人以上の事業場には衛生委員会の設置が義務づけられています。資料の作成、議事の準備、記録を担当することがあります。
6.救急対応・体調不良者への対応
社内でのけが、体調不良、急病への一次対応です。看護技術を使う数少ない場面ですが、頻度は高くありません。
ストレスチェックの実施者になれます
ここは看護師にとって重要な点です。労働安全衛生規則では、ストレスチェックの実施者を次のように定めています。
| 区分 | 要件 |
|---|---|
| 医師 | 研修の要件なし |
| 保健師 | 研修の要件なし |
| 歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師 | 厚生労働大臣が定める研修を修了していること |
看護師でも、所定の研修を修了すれば実施者になれます。保健師資格がなければ関われない、というわけではありません。
実施の事務に従事できない人がいます
同規則では、ストレスチェックを受ける労働者の解雇・昇進・異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、実施の事務に従事してはならないとされています。
人事権を持つ人が関われないという設計になっているため、中立的な立場の医療職が必要とされる構造があります。企業看護師の存在意義のひとつです。
勤務先の種類
| 勤務先 | 特徴 |
|---|---|
| 企業の健康管理室 | 一般にイメージされる企業看護師。求人は多くありません |
| 健康保険組合 | 特定保健指導など |
| 健診センター・人間ドック | 採血・検査の実務があります |
| 治験関連(CRC・CRA) | 製薬企業・SMO・CROなど |
| コールセンター(受診相談・医療相談) | 電話対応が中心 |
| 医療機器・製薬メーカー | クリニカルスペシャリストなど |
| 保育施設・学校 | 企業とは別ですが、日勤中心の選択肢です |
「企業看護師」と一括りにされがちですが、中身はかなり違います。健康管理室の求人だけを探して見つからない、という方は、健診センターや治験関連も含めて探すと選択肢が広がります。
看護師以外の職種への広がりは看護師以外の仕事、一般企業への転職の考え方は看護師から一般企業へをご覧ください。
向いている人・つらくなりやすい人
| 特徴 | |
|---|---|
| 向いている | 予防と教育に関心がある/文書作成が苦にならない/人事や総務と協働できる/一人で判断して動ける |
| つらくなりやすい | 看護技術を使いたい/成果が見えにくいと不安/一人職場が苦手/医療職が周りにいないと落ち着かない |
「一人職場」であることが最大の特徴です
企業の健康管理室は、看護職が1人という職場が珍しくありません。
- 相談できる同じ職種の同僚がいません
- 産業医は非常勤で、月に数回しか来ないことがあります
- 判断に迷っても、その場で聞ける相手がいません
- 一方で、自分の裁量で進められる範囲は広くなります
不利益になりやすい点
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| 求人が少ない | 1社に1〜数名の職種です。募集が出る頻度が低くなります |
| 夜勤手当がなくなる | 病棟からの転職では、年収が下がることがあります |
| 看護技術から離れる | 病棟へ戻る可能性を残すなら、在籍期間を考えてください |
| 成果が数字で見えにくい | 受診率や面談件数で評価されることがあります |
| 人事・労務の知識が要る | 休職・復職の手続きに関わります |
| 契約社員での募集がある | 雇用形態を確認してください |
年収の考え方は企業看護師になるには、勤務先による給与差の構造は勤務先別の看護師の給料にまとめています。
応募前に確認すべき8項目
- □ 健康管理室の看護職は何名か(一人職場かどうか)
- □ 産業医は常勤か非常勤か。来社の頻度は
- □ ストレスチェックの実施者は誰か。自分が担当するか
- □ 保健師資格が必須か、看護師でも可か
- □ 事業場の規模(常時50人以上かどうかで義務が変わります)
- □ 雇用形態(正社員・契約社員・派遣)
- □ 健診の運営をどこまで担当するか
- □ 休職・復職支援に関わるか
面接での聞き方は看護師の面接で聞かれる質問、職務経歴書の書き方は看護師の職務経歴書の書き方を参照してください。
よくある質問
企業看護師とは何ですか?
企業の健康管理部門などで働く看護師の呼称で、資格の名称ではありません。「産業看護師」も同じものを指して使われます。健康診断の運営、保健指導・健康相談、メンタルヘルス対応、産業医との連携、衛生委員会の運営、社内での救急対応などを担当します。
産業看護師と企業看護師は違うのですか?
どちらも資格の名称ではなく、企業等の健康管理部門で働く看護師を指す呼び方です。厳密な使い分けはなく、求人でも両方の表記が使われています。「産業保健」という分野の呼び名から産業看護師、勤務先が企業であることから企業看護師、という程度の違いです。
保健師の資格がないとなれませんか?
看護師資格のみで働ける求人もあります。ただし保健師を要件としている求人も多くあります。ストレスチェックの実施者については、労働安全衛生規則で医師・保健師は研修の要件なし、看護師は厚生労働大臣が定める研修を修了していることが要件とされています。看護師でも研修を修了すれば実施者になれます。
病院と何がいちばん違いますか?
目的が違います。病院は治療と回復を目的としますが、企業では健康を維持し、働き続けられる状態を保つことが目的になります。相手は基本的に健康な従業員で、医療処置はほとんどありません。夜勤がなく、土日祝が休みの企業が多い点も大きな違いです。
ストレスチェックは看護師でも実施できますか?
厚生労働大臣が定める研修を修了していれば実施者になれます。労働安全衛生規則第52条の10では、実施者を医師、保健師、および所定の研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師と定めています。なお、労働者の解雇・昇進・異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、実施の事務に従事してはならないとされています。
産業医になることはできますか?
できません。産業医は医師でなければならないと定められており、看護師・保健師が産業医になることはできません。企業看護師は産業医と連携して業務を進める立場になります。産業医が非常勤で月に数回しか来社しない企業も多く、その間をつなぐ役割が求められます。
求人は多いですか?
多くありません。1社に1〜数名という職種のため、募集が出る頻度が低くなります。健康管理室の求人だけを探して見つからない場合は、健診センター、健康保険組合、治験関連(CRC・CRA)、医療相談のコールセンターなども含めて探すと選択肢が広がります。
一人職場でも大丈夫でしょうか?
企業の健康管理室は看護職が1人という職場が珍しくありません。相談できる同じ職種の同僚がおらず、産業医も非常勤で月に数回ということがあります。判断に迷ってもその場で聞ける相手がいない一方、自分の裁量で進められる範囲は広くなります。応募前に「看護職は何名か」「産業医の来社頻度」を確認してください。
まとめ|法律の枠組みの中で働く仕事です
- 「企業看護師」「産業看護師」は資格名ではありません。働く場所の呼び方です
- 常時50人以上の事業場に課された労働安全衛生法上の義務が、この仕事の土台です
- 業務は健診の運営・保健指導・メンタルヘルス・産業医との連携・衛生委員会・救急対応
- 看護師でも、所定の研修を修了すればストレスチェックの実施者になれます
- 産業医にはなれません。連携する立場です
- 一人職場が珍しくなく、求人も多くありません
企業看護師は、看護技術ではなく、仕組みで人の健康を守る仕事です。そこにやりがいを感じられるかどうかが、いちばんの分かれ目になります。なり方と年収は企業看護師になるにはをご覧ください。
執筆・監修:江波戸 純希(えばと よしき)
WEBBOX合同会社 代表社員/スキマかんご 編集責任者
- 職業紹介責任者講習 修了
- 有料職業紹介事業の許可を受けた株式会社GRADに在籍
- 看護師専門の人材紹介サービス「ナースJJ」で、看護師の転職支援を担当
- 現在は募集情報等提供事業として、看護・介護の求人情報サービス「スキマかんご」を運営
制度・報酬・求人条件は、厚生労働省をはじめとする行政および各サービスの公開情報を確認したうえで記載しています。制度は改定される場合があるため、最新の内容は各公式サイトでもご確認ください。
※スキマかんごは募集情報等提供事業です。求人者・求職者間の雇用のあっせん(職業紹介)は行いません。応募は掲載施設へ直接お届けしています。
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